今年も保護者の「助かります!」のリクエストから
学校や園で出される、図工の課題を制作しました。
海や森林、虫など、自然をテーマにしたものが
テーマに多く出されます。
今回は、改めて「子どもの絵」について
考えさせられました。

「お出かけした所や、海に行った時の事を描いてみよう。」
ごくごく一般的な内容です。
中央の魚は黒いクレパスで描いてあります。
「色はないの?」
「だって、死んでいるから黒かった。」
たかしくんは、余りたくさん話しません。
黙々と集中して描きます。
お母様に聞くと
「そういえば、浜辺で死んだフグをずっと見ていました。」
幼児は「死」と無関係であると
大人の多くは思っているでしょう。
たかしくんの、この絵を見て
子どもなりに死生観があることを感じました。
生まれて来たのに、何故、死ぬのだろう?
私は9歳くらい迄の長い期間、考えていました。
親が心配する程、余り人前で話さない子どもでした。
自分自身の子ども時代が蘇ってきた作品です。

翌週、たかしくんが制作した「クジラ」
黒い画用紙の上に、アルミホイルの立体を作りました。
青色のペンで、仕上げようとしている間近でした。
空間のとらえ方、迫力のある表現にドキッとしました。
他の子達と形態が違います。
「海でクジラが泳いでいるんだよね。」
「そう、ザバーンて。潮を噴いてるの。」
「幼児は知っている事を描く」といわれますが
たかしくんの夏休みの体験と、心の成長を垣間見ました。
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同じく、夏休みの思い出という幼稚園の宿題で描きました。
「誰と行ったの?」
「パパとママとお姉ちゃんと、みんなで行ったの。すっごく楽しかったよ。」
嬉しそうに話していました。
「では、絵の具を塗ってみようか?」
としたところ、みこちゃん、急に涙が出てきました。
理由が分からず、この絵はストップしました。
サヨナラの時間になっても
涙は止まりませんでした。
翌朝、みこちゃんママにメールを。
授業中を振り返って、私が何か無神経な事を言ったかな?
何だったんだろう、やはり気になりました。
この旅行で、いつも仕事で不在なパパと
みこちゃんは一緒にいられて楽しかった。
でも旅行が終わると、またパパは忙しくなってしまった。
楽しい想いを描きながら
「でもあの時のパパはいないんだ。」と考えると悲しくなった
ということでした。
感受性の強さに
また、ドキッとしました。
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「どんな感じで描きたい?」
個人レッスンなので、意向を聞きます。
「絵の具で直接、グワッと描きたい。」
せん君は線が伸びます。
彼自身の性格と、そうした特性を活かしてみたいと考えています。
全紙大の紙に、墨で描いても、よどみがない、思い切りのいい絵を描きます。
ただし
児童画展には出せません。
大きさに制約があるからです。
キッズクラフト展でしか今の所、発表出来ませんが
「いいね。」と言って下さる観客が少なくありません。
この日は宿題なので
仕方なくこのサイズです。

せん君のファン(?)ご近所ステラ・マリア(南フランス料理店)の
マリーさんが見学。
「せん、これ描いてみなよ〜、これなんかいいじゃない?」
と一緒に図鑑を見ながら、しきりに薦めます。
「ええねん、これで。」
(なんでマグロ描くかな〜。刺身で好きなのか?)

珍しく、下書きしました。
でも、完成した絵とは違います。
気が変わったのです。
「このサイズで描けるんなら、次回は四つ切サイズで描こうか。」
と、何とか一度は賞をとらせたい、という親ゴコロ。(先生ゴコロ)
「ええねん、別にとれなくても。」
描いてる時が楽しくて、描いた後はスッキリ、なのです。
ご両親も、個性を固まらせず、伸ばしたいという想いで
教室を選んでくれたそうです。
賞もとれたら嬉しいけれど、感受性豊かな
クリエィティブな大人になって欲しい、と共鳴してくれています。
だから「ええねん。」ということです。
ええように、大きくなってね。
(2009年9月3日)